本を読む本まとめ

本を読む本 (講談社学術文庫)

本を読む本 (講談社学術文庫)

読書の目的を考える(P19)

  • 情報を得るための読書か?
    • 新聞、雑誌
  • 何かの理解を深めるための読書か?
    • 読み手と書き手の「理解の深さに差がある」場合
  • 娯楽のための読書か?
  • この本を理解するためか?(本質的読書か?)シントピカル読書か?(付帯的読書か?)(P177, P220)

初級読書(レベル1)(P27)

  • 個々の言葉を識別すること

点検読書(レベル2)(P39)

点検読書とは?
  • 限られた時間内に一冊の本からできる限り多くのものを引き出す技術である。(P28)
  • たとえどんなに長く難しい本であっても、点検読書の2つの段階は早くすませるべきである。(P47)
  • 点検読書をしながら問うべきことは、下記三つである。(P60)
    1. 一、それはどんな種類の本か
    2. 二、全体として何を言おうとしているのか
    3. 三、そのために著者は、どのような構成で概念や知識を展開しているのか
目的

いま手にしている本をさらに入念に読む必要があるか調べることである。(P40)

拾い読み(下読み)(P40〜P43)
  1. 表題や序文を見ること
  2. 本の構造を知るために目次を調べる
  3. 索引を調べる
  4. カバーに書いてあるうたい文句を読む
  5. その本の議論のかなめと思われるいくつかの章をよく見ること
  6. ところどころ拾い読みしてみる(とくに最後の二、三ページは必ず読む)
表面読み(P44)
  • 難解な本にはじめて取り組むときは、とにかく読み通すことだけを心がける。すぐには理解出来ない箇所があっても、考えこんだり語句調べに手間取ったりしないで先へ進むのである。
  • とにかく通読することだ。
積極的読書(質問する)(P53)
  • 全体として何に関する本か
    • 読者はその本の主要テーマを発見し、それを著者がどのようにしてさらに小さい基礎的なテーマやトピックに細分し、順序良く発展させているかを見なくてはならない。
  • 何がどのように詳しく述べられているか
    • 著者が伝えようとしちえる思考、主張、議論の要点を、読者は発見しようと努めなくてはならない。
  • その本は全体として真実か、あるいはどの部分が真実か
    • はじめの二つの質問に答えてからでないと、読者はこの質問に答えられない。何を言っているのかがまずわからなくては、それが真実かどうか決めることはできない。ある本を理解したときに、著者の精神を知るだけでなく、その本が果たして真実かどうかを判断するのは、まじめな読者の義務である。
  • それにはどんな意義があるのか
    • その本が情報を与えてくれたら、その意義を問わなくてはならない。著者はなぜ、そういうことを知ることが大切だと思うのか。それを知ることは、読者にとって重要か。そしてまた、その本が情報を与えるだけでなく、読者を啓発してくれたのなら、その先でどんな示唆がされているかを問いかけて、さらに啓発されるよう努める必要がある。
積極的読書(本に書き入れをする)
  • 効果的な書入れの工夫(P58)
    • 傍線を引く。重要な箇所や、著者が強調している箇所に線を引く。
    • 行のアタマの余白に横線を入れる。すでに傍線をほどこした箇所を強調するため、または、下線を引くには長すぎるとき。
    • ☆印、※印、その他の印を余白につける。これは濫用してはならない。その本の中でいくつかの重要な記述を自立させるために使う。
    • 余白に数字を記入する。議論の展開につれて要点の移り変わりを示すため。
    • 余白に他のページのナンバーを記入する。同じ本の他の箇所で著者が同じことを言っているとか、これと関連したり矛盾したことを言っているということを示すため、各所に散在する同じ種類の発想をまとめるためである。ーーを比較参照せよ、という意味でcf.を使う人も多い。
    • キー・ワードを◯でかこむ。これは下線を引くのとだいたい同じ効果をもつ。
    • ページの余白に書き入れをする。ある箇所を読んでいて思いついた質問や答えを記録するため、また複雑な議論を簡単な文にまとめるため、主要な論点の流れを追うために、これをする。裏表紙の見返しを使って、出てくる順番に要点をメモし、自分専用の索引を作ることも出来る。

分析読書(レベル3)(P68)

第一段階(概略)
  • 目的
    • 分析読書の第一段階は、本の構成のアウトラインをつかむこと
  • 第一規則:何についての本であるか見分ける(本を分類する)(P69)
    • たとえば、まず、フィクション(小説、戯曲、叙事詩、など) か 教養書(「教養書」というのは、広い意味での知識の伝達を第一の目的とする本のことである。) のどちらかを選択する。教養書の場合は、哲学 or 歴史 or 科学 or 数学 のどれかを選択する。
  • 第二規則:その本全体が何に関するものかを、できるだけ簡潔に述べる。(P88)
    • その本全体の統一を、二、三行か、せいぜい数行の文にあらわしてみること
    • その本の主な部分を述べ、それらの部分がどのように順序よく統一性をもって配列されて全体を構成しているかを示すこと(第三の規則)(P)
      • 第一に、どの論証にもいくつかの叙述が含まれていることに注意しなくてはならない。その中には、著者の示す結論を、なぜ受け入れなければならないか、その理由を述べたものである。したがって、最初に結論が見つかれば、その理由を探し、理由が先に見つかれば、そこから導かれる結論を検討することである。
      • 第二に、論証には二つの方法があるが、これを区別することである。論証には、事実によって、一般化を証明する方法と、一連の一般叙述によって一般的法則を発見する方法がある。これらは帰納法、演繹(えんえき)法と呼ばれるものだが、名称はともかく、重要なのはこの二つを区別することである。
      • 第三に、著者が「仮定」しなければならないのは何であるか、論証や証拠によって「立証できるもの」は何か、論証を必要としない自明あんことがらは何であるか、ということをしっかり見定めることである。著者がすべての仮説を率直に示すことも、読者が自分で発見するのにまかせることもある。すべてのことを定義できないのと同様に、すべてのことを立証することはできない。どの命題も立証しなければならないとしたら、そもそも何かを論証することは不可能になる。ある命題を論証するには、公理、仮定、公準などが必要であり、また立証された命題は次の論証の前提として使えるのである。
  • 第三の規則:アウトラインをつかむ(P97)
  • 第二の規則では、まず、統一の方に注目し、第三の規則では複合性の方に注意を集中しようというわけである。
  • 第三の規則は、部分をただ列挙するだけに終わるのではない。部分の大要を述べること、つまり部分をそれぞれ統一性と複合性をもった小さな全体とみて、その要約を試みなくてはならない。
  • 第四の規則:著者の問題としている点は何であるかを知る(P105)
    • 著者というものは一つないし一連の問題から出発するものだ。本に書かれているのはその答えである。(つまり、著者の問題としている点をみつける)
    • 著者の問題に対する解決が何であるかを検討すること。
第二段階(解釈)
  • 目的
    • 分析読書の第二段階は、本の構造をつかむことではなく内容を解釈すること。
  • 第一規則(分析読書の第五規則):キー・ワードを見つけ、著者と折り合いをつける(P109)
    • 一つ目:キー・ワード、専門用語を見つけ理解する
      • キー・ワードを見つけ、理解する
      • 専門用語を見つけ、理解する
    • 二つ目:単語の意味をつかむ
      • 単語が一つの意味に使われているか、あるいはいくつかの意味に使われているか見極める
      • いくつもの意味に使われているときは、それぞれの意味がどのように関連しているか調べる。
      • 単語が違った意味に使い分けられている箇所に注目して、前後の文脈から、意味が変化した理由をつかむ手がかりがあるか調べてみる。
      • 前後の文脈のわかっている単語を残らず動員して、わからない単語の意味をつかむ。
  • 第二規則(分析読書の第六規則):重要な文を見つけ著者の主要な命題を把握する(P127)
    • 読者は命題を知るだけではなく、「その命題をたてるにいたった理由」を理解しなくてはならない。(P127)
    • 命題を見つける。すなわち、文のあらわす意味をつかむことである。単語のあらわす意味がわかれば、名辞を見つけることができたように、文を構成する、とくに重要な単語を解釈することによって命題をつかむことができよう。(P135)
      • 「自分の言葉で言い換えてみる」、文中の命題が理解できたかどうかを判断するには、これが一番良い方法である。順序を少し入れ替えただけで著者の言葉をそのまま繰り返すことだけしかできなければ、著者の述べていることが理解できたかどうか疑わしい。同じ事をまったく別の表現で言い換えるのが理想だが、ともかく、著者の言葉から離れることができなければ、読者に伝達されたのは「ただの言葉」にすぎず、「思想や知識」までは伝わっていない。それでは、著者の精神をつかんだことにはならない。(P136)
      • 外国語を翻訳するときにも、このテストは有効である。外国語で述べられていることを自国語であらわすことができなければ、原文の意味を理解しているとは言えない。かりに自国語に移しかえられても、言葉のうえだけの翻訳にすぎないこともよくある。できあがったものは、忠実な複製であっても、訳者には、原著者の伝えたい内容が理解できていないかもしれないのである。(P136)
  • 第三規則(分析読書の第七規則):一連の分の中に著者の論証を見付ける。または、いくつかの文を取り出して、論証を組み立てる(P127)
    • 論証とは、ある結論を導くための根拠、理由を示す一連の文のことである。(P127)
    • まず重要な論証を述べているパラグラフを見つけること、そのようなパラグラフが見つからないときは、あちこちのパラグラフから文を取り出し、論証を構成する命題が含まれている一連の文を集めて、論証を組み立てることである。(P139)
    • この規則を実行するのに役立ちそうなこと三つ(P141)
      • 第一:どの論証にもいくつかの叙述が含まれ地得ることに注意しなくてはならない。その中には、著者の示す結論を、なぜ受け入れなければならないか、その理由を述べたものもある。したがって、最初に結論が見つかれば、その理由をさがし、理由が先に見つかれば、そこから導かれる結論を検討することである。
      • 第二:論証には二つの方法があるが、これを区別することである。論証には、事実によって、一般化を証明する方法と、一連の一般的叙述によって一般的法則を発見する方法がある。これらは帰納法演繹法と呼ばれるものだが、名称はともかく、重要なのはこの二つを区別することである。
      • 第三:著者が「仮定」しなければならないのは何であるか、論証や証拠によって「立証できるもの」は何か、論証を必要としない自明のことがらは何であるか、ということをしっかり見定めることである。著者がすべての仮説を率直に示すことも、読者が自分で発見するのにまかせることもある。すべてのことを定義できないのと同様に、すべてのことを立証することはできない。どの命題も立証しなければならないとしたら、そもそも何かを論証することは不可能になる。ある命題を論証するには、公理、仮定、公準などが必要であり、また立証された命題は次の論証の前提として使えるのである。
  • 第四規則(分析読書の第八規則):著者の解決が何であるかを検討すること(P142)
    • 著者と折り合って、名辞、命題、論証をつかむことができたのだから、読んで分かったことをたしかめなくてはならない。(P142)
    • 著者が解決しようとした問題のうち、解決できたのはどの問題か、それらの問題を解決する途中で、あらたな問題にぶつからなかったか、著者が解決できなかったと認めているのはどの問題か。これらのことは、読者はもとより、著者も知っていなくてはならないことである。(P142)
    • 著者が解決したい問題はどれで、解決していない問題はどれか、見きわめる。未解決の問題については、解決に失敗したことを、著者が自覚しているかどうか見定める。
第三段階(批評)
  • 目的
    • 著者に語り返す。
    • いままで、読者はもっぱら目と頭をはたらかせ、著者の述べることに黙って耳を傾けてきたが、こんどは、読者が著者と議論し、自分の意見を述べる番である。(P143)
    • 分析読書の第三段階の規則は、本から学ぶにはどうするか、その最終段階を扱うものである。(P148)
  • 正しく本を批評する(P144)
    • 知識を伝える本の場合、著者の目的は、何かを教えることにある。読者が納得し、あるいは説得されてはじめて、著者の努力が成功を収めたと言える。だが、読者が納得しなくても、著者の意図や努力は尊重すべきである。読者は、よく考えて判断を下すという経験ができたからである。賛成できない場合は、反対の根拠をあげることが、読み手としての最低の務めである。判断を保留する場合でも、これは同じである。(P145)
    • 批評の第一規則(P150)
      • 「まず、<この本がわかった>と、ある程度、確実に言えること。その上で、<賛成>、<反対>、<判断保留>の態度を明らかにすること」である。読者の取り得る批評的立場はこの三つにつきる。
    • 批評の第二規則(P153)
      • 「反論は道筋をたててすること、けんか腰はよくない」
    • 批評の第三規則(P154)
      • 「反論は解消できるものだと考えること」(P154)
      • 理性のある人間なら、必ず同意に達することができる。この「できる」というところが重要で、同意「する」のではない。理性ある人間なら、相手に同意「できる」、ということに注目してほしいのである。(P154)
      • 「いかなる判断にも、必ずその根拠を示し、知識と単なる個人的な意見の区別を明らかにすること」(P158)
  • 知的エチケットの一般的心得(P173)
    • 「概略」と「解釈」を終えないうちは、批評にとりかからないこと。(「わかった」と言えるまでは、賛成、反対、判断保留の態度の表明をさし控えること)
    • けんか腰の反論はよくない。
    • 批評的な判断を下すには、十分な根拠をあげて、知識と単なる個人的な意見を、はっきり区別すること。
  • 批判に関してとくに注意すべき事項(P173)
    • 著者が知識不足である点を、明らかにすること。
    • 著者の知識に誤りがある点を、明らかにすること。
    • 著者が論理性に欠ける点を、明らかにすること。
    • 著者の分析や説明が不完全である点を、明らかにすること

シントピカル読書(レベル4)(P220)

  • 同一主題について二冊以上の本を読む方法(P220)
  • 同じテーマについて数冊の本を読むことである。
  • 点検読書も、分析読書も、ともにシントピカル読書を念頭においた準備作業と言ってよいのである点検読書はここにいたって読者の大切な道具としてその本領を発揮する。
第一段階:関連箇所を見つけること(P227)
  • シントピカル読書では、読む本ではなく、読者、および読者の関心事が、最優先されなくてはならない。(P227)
  • シントピカル読書の第一段階は、主題に関連のある作品をすべて再点検し、読者自身の要求にもっとも密接なかかわりをもつ箇所を見つけ出すことである。(P227)
  • 主題の研究のために読むのであって、その本を読むことが、目的ではないからである。(P227)
  • その本を書いた著者自身の意図からまったく外れたところで役にたつのであっても、この段階ではさしつかえない。(P228)
  • シントピカル読書は、最高に積極的な読書法である。分析読書も、もちろん積極的だが、その場合の本と読者は師弟の関係にある。しかし、シントピカルに読む場合は、「読者」が、師でなくてはならない。
  • 準備作業で関連書とした書物を点検し、もっとも関連の深い箇所を発見する。(P245)
第二段階:著者に折り合いをつけさせる(P229)
  • 主題について、特定の著者に偏らない用語の使い方をきめ、著者に折り合いを付けさせる。(P245)
第三段階:質問を明確にすること(P230)
  • 読者自身が用語の使い方をきめるのであるから、命題もまた、読者自身がたてなくてはならないのである。(P230)
  • 一番良い方法は、問題に解決を与えてくれそうな一連の質問を作り、その質問に、それぞれの著者から答えてもらうことである。(P230)
  • 一連の質問をして、どの著者にも偏らない命題をたてる。この質物には、大部分の著者から答えを期待できるようなものでなければならない。しかし、実際には、著者がその質問に表立って答えていないこともある。(P245)
第四段階:論点を定めること(P231)
  • さまざまな質問に対する著者の答えを整理して、論点を明確にする。あい対立する著者の論点は、必ずしも、はっきりした形で見つかるとは限らない。著者の他の見解から答えを推測することもある。(P245)
第五段階:主題についての論争を分析すること(P232)
  • 「それは真実か」、「それにはどんな意義があるか」を問うのである。(P232)
  • 主題を、できるだけ多角的に理解できるように、質問と論点を整理し、論考を分析する。一般的な論点を扱ってから、特殊な論点に移る。各論点がどのように関連しているかを、明確に示すこと。(P245)